不動産売却とは?不動産を売る方法や売却理由別の注意点・業者選びのポイント

不動産を売却しようと考え始めたとき、不安や戸惑いを感じる方は少なくありません。「まず何から始めるといいのか」「どのような注意点があるのか」「信頼できる業者をどう選べばいいのか」―。本記事では、このような疑問を持つ方に向けて不動産を売る方法の全体像を分かりやすく解説します。売るときの流れや、売却理由別の注意点、業者選びのポイントまで網羅します。最後まで読むことで自信を持って売却に臨めるようになりますので、ぜひ参考にしてください。

目次

不動産売却とは

不動産売却とは、所有するマンションや一戸建て、土地などを売りに出すところから、契約を交わし、買い手に引き渡すことまでを指します。マイホームは「人生最大の買い物」と言われるほど高額な資産であり、その売却は多くの方にとって初めての経験となるでしょう。一般的に不動産の売買は何度も経験することではないため、売却を考えるときに不安や戸惑いを感じるのが通常です。売却を円滑に進めるため、専門知識と経験を持つ不動産仲介会社に売却を依頼します。

売却の理由は、家族が増えたことによる住環境の変化、転勤、離婚など人それぞれです。生活費を得るために売却したいケースや、親から相続した不動産を売りたいと考える場合もあります。どのような理由であれ、適切な準備と知識を得て臨むことが、スムーズで満足のいく売却につながるポイントとなります。

不動産を売るには|不動産売却の方法・流れ

不動産を売るにはいくつかのステップが必要ですが、基本的な流れを理解しておくことで、円滑に進められます。ここでは、売却の準備段階から最終的に納税額を計算する確定申告を行うまでの各ステップを詳しく解説します。不動産を売却する流れは次の通りです。

不動産を売却する流れ
  1. 売却の事前準備をする
  2. 不動産会社に査定依頼する
  3. 不動産会社と媒介契約する
  4. 売却活動を展開する
  5. 購入希望者と条件交渉する
  6. 買主と売買契約する
  7. 決済・引き落としを完了する
  8. 確定申告を行う

①売却の事前準備をする

不動産売却を成功させるためには、事前準備が重要です。ローン残高を確認するところから相場調査まで、売却前に行うべき次の7つのステップをそれぞれ解説します。

売却前の7つのステップ
  1. ローン残高の確認
  2. 建物や土地の名義人の確認
  3. 隣地との境界線の確認
  4. 売却にかかる費用の確認
  5. 売却スケジュールの確認
  6. 必要書類の準備
  7. 売却相場の調査

ローン残高の確認

まずやるべきことはローン残高の確認です。売却で得るお金からローン残高を差し引いた額がマイナスになると、マイホームを売っても自己資金の持ち出しが必要になってしまいます。事前にローン残高を正確に把握し、最低限の売却価格をイメージすることが重要です。残高は、手元にある返済予定表に記載されているほか、金融機関に問い合わせれば分かります。

注意点は、一括返済する場合は手数料がかかるケースがあることです。金融機関によって扱い方が異なるため、事前に問い合わせをしておくと安心です。例えば、銀行最大手の三菱UFJ銀行で住宅ローンを期限前に完済する場合、窓口なら33,000円(インターネット経由なら16,500円)かかります。

建物や土地の名義人の確認

建物や土地の名義人の確認も重要なポイントです。法務局で登記簿謄本を取得し、売主名義になっているかを改めて確認してください。売買契約後に代金の決済を完了すると、所有権の移転登記(名義変更)に進みますが、売主と名義人が異なると手続きを終えられません。そもそも、売主と名義人が異なれば、通常は売却活動は進まないでしょう。

不動産の相続や贈与を受けたものの名義変更が遅れ、実際の所有者と名義人が異なるケースもあります。このような場合、売却前に名義変更が必要となり、手続きに時間がかかります。例えば、相続で不動産が家族との共有名義になっている場合、建物や土地全体を売却するなら共有者全員の同意が必要なことにも注意してください。

隣地との境界線の確認

売却の事前準備として、隣地との境界線を確認しておくことも大切です。境界は、土地と土地の境目を示します。通常、石やコンクリートでできた境界標で確認できます。境界線は、正確な土地面積を算出するための根拠となるため売却価格を決める上で非常に重要です。

境界を巡る隣地とのトラブルはどこでも発生しうる問題であり、不動産を売却する際、売主は境界明示義務を負うのが一般的になっています。境界線が不明確だったり、境界標が見当たらなかったりする場合は、土地家屋調査士による測量を検討することになります。

売却にかかる費用の確認

不動産売却にはさまざまな費用がかかります。目安として、売却価格の3~10%程度をみておくとよいでしょう。費用項目ごとに内容と目安をまとめると次の表のようになります。

【売却にかかる主な費用】

費用項目内容目安
仲介手数料売却を仲介した不動産会社に払う売却価格の3%+6万円+消費税
印紙税売買契約書に収入印紙を貼付して納税契約書の金額により異なり、例えば1,000万円超5,000万円以下なら2万円
抵当権抹消費用抵当権の登記を抹消する費用不動産1つにつき登録免許税1,000円
繰り上げ返済手数料住宅ローンを期限前に完済する費用0~3万円程度(金融機関により異なる)
譲渡所得税売却で利益が出た場合に納める所得税率は約15%または約30%
測量費用土地の境界と面積を明らかにする費用10万~80万円程度
解体費用(建物がある場合)更地にして売却する場合にかかる1坪3万~8万円程度
各種証明書の取得費用登記簿謄本や印鑑証明書などの取得費用数千円

不動産を売る時の費用は、売却価格や物件の状態などによって大きく変わります。

費用の中で金額が大きくなるのは、不動産会社に支払う仲介手数料です。売却価格が大きくなるほど金額が増えます。抵当権抹消費用は、住宅ローンを貸した金融機関が返済を受けられない場合に備えて不動産に設定した、抵当権を外すためにかかります。登録免許税に加え、司法書士に依頼すればその報酬も必要です。繰り上げ返済手数料は、売却代金で住宅ローンを一括返済する際にかかります。

譲渡所得税は売却額と所有期間によって負担が大きく変わる税金です。税額を計算する基になる譲渡所得は、売却価格から取得費用(購入代金や購入時の経費)と譲渡に要した費用を差し引いて求めます。注意するべきは所有期間に応じて税率が大きく異なる点です。所有期間が5年以下なら短期譲渡所得となって所得税と住民税を合わせた税率は39.63%(所得税30.63%、住民税9%)、5年超なら長期譲渡所得となり20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となります。

土地の面積を確認する測量は、土地の状況をそのまま反映させる現況測量と、境界を確定させる確定測量があり、確定測量の方が高額です。建物の解体費は構造によって大きく異なり、木造なら1坪当たり3万~5万円程度になります。

売却スケジュールの確認

事前準備で次に行うのは、売却スケジュールの確認です。一般的な売却プロセスは、査定と仲介を依頼する不動産会社選びから始まり、媒介契約、売却活動、売買契約、そして決済・引き渡しへと進みます。全体の期間は3~6カ月程度が一般的です。

通常は不動産会社選びと査定に2週間程度、買主を見つける売却活動は物件にもよりますが3カ月前後かかるでしょう。続いて売買契約に1〜3週間、引き渡しまでにさらに1〜2カ月ほどを見込みます。

スケジュールを立てる際は、新居の購入や引っ越しなどご自身の事情を踏まえて余裕を持たせることが大切です。買主が見つかるまでの期間は、売却希望価格や市況にも大きく左右されます。引っ越しの繁忙期(2〜3月)に向けて売却が完了するように売りだすことで、より多くの購入希望者の目に触れる可能性が高まるため、前年秋ごろから準備に入るのがおすすめです。

必要書類の準備

不動産売却を円滑に進めるには、必要書類を事前に確認し、準備しておくことも大切です。主な必要書類とその内容、取得方法を一覧にまとめましたので参考にしてください。

【主な必要書類】

必要書類等内容取得方法
身分証明書運転免許証やパスポートなど本人が用意
登記簿謄本不動産の権利関係を確認法務局で申請
購入時の売買契約書購入時の契約内容を確認購入時のものを用意
購入時の重要事項説明書購入時の売買条件などを確認購入時のものを用意
登記済権利証か登記識別情報所有者であることを証明購入時のものを用意
土地測量図土地面積や境界を確認購入時のものを用意
固定資産税納税通知書・評価証明書物件ごとの固定資産税の納税額や評価額を確認市町村から毎年送付
図面などの物件書類間取りや設備を確認購入時のものを用意
確認済証・検査済証建築基準法に適合していることを確認購入時のものを用意
管理規約や修繕計画(マンションの場合)管理組合のルールを確認管理組合か管理会社から入手
印鑑証明書契約書に押す実印の証明書市町村役場で取得

必要書類は通常、仲介を依頼した不動産会社から求められます。スムーズに手続きを進めるためにも、早めに用意する必要があります。売ることを決めたら、過去の書類を整理するなど準備にすみやかに取り掛かるのがおすすめです。

物件の所有者が複数いる場合、身分証明書や印鑑証明書などは全員分の書類を用意する必要があります。遠方に住む方がいる場合は早めに連絡を取りましょう。購入時に受け取った書類を紛失するなどした場合は、再発行の手続きや代替書類の取得が必要になることがあるため、不動産会社や役所に相談します。

売却相場の調査

不動産を売る際は、価格を適切に設定することが大切です。そのための事前準備では、ご自身の物件と似た不動産の売却価格が参考になります。相場を知ることで、不動産会社の査定額が妥当かどうか分かる上、適正価格での早期売却も可能となるでしょう。

相場を調べる際には、下記サイトが参考になります。

レインズ・マーケット・インフォメーションは、不動産の指定流通機構が運営する不動産流通標準情報システムを指します。実際に売買された物件の成約価格を把握することが可能です。エリアや物件種別、面積などの条件を入力することで、該当する取引事例を手軽に閲覧できます。

国道交通省の不動産情報ライブラリは、不動産の取引価格や地価公示といった価格情報がまとめられているサイトです。取引価格を地図上で検索できるだけでなく、地形や防災、周辺施設の情報まで網羅されているのが特徴です。

さらに、各種不動産ポータルサイトでも相場は確認できます。実際に売り出されている物件の価格を参考にすることで、現在の市場動向を把握しやすくなるでしょう。

価格を決める際、取引事例をそのまま価格に反映させるのではなく、ご自身の物件との違いも意識してください。築年数や物件と設備の維持状態、立地などによって価格は変動します。取引事例は過去のものであるため、現在の市場状況とは異なる可能性があります。そのため、複数の情報源を利用するとともに専門家による査定を受け、総合的に判断するのがおすすめです。

②不動産会社に査定依頼する

不動産会社が行う査定の方法には、「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。それぞれの概要と期間の目安をまとめると次の通りです。

【査定の種類】

種類概要期間の目安
机上査定用意された資料や情報を基に簡易的に査定する数日
訪問査定物件や周辺状況を現地確認した上で査定する約1週間

机上査定は売却を希望する方が提供した情報などを基に、取引相場なども参考にしながら簡易的に査定します。結果が素早く出てくるのがメリットです。ただし、物件の実際の状態や周辺環境を把握しにくいため、精度は訪問査定より劣ります。訪問査定は不動産会社の担当者が入念に現地確認を行うため精度は期待できますが、一定の時間を要します。

実際に査定を依頼する流れは次の通りです。

査定の流れ
  1. 机上査定を依頼して査定額を確認する
  2. 訪問査定を依頼して訪問日を調整する
  3. 訪問査定に立ち会う
  4. 訪問査定の査定額を確認する
  5. 売却価格を決める

机上査定をしてもらう場合は、オンラインや電話で基本情報を提供します。さらに訪問査定に進むなら、訪問日を調整の上、査定に立ち会います。室内の状態や設備の稼働状況のほか、物件の外観や周辺環境を確認してもらい、1週間程度で査定額が示されるのが一般的です。査定額に納得できれば、実際に売りだす価格に反映させます。

適切な価格を導き出すため、査定を依頼する際はリフォーム履歴や設備の不具合など、細かな情報も伝えることをおすすめします。自身の売却希望価格や売却理由、希望する売却時期なども明確にしておくと、より適切なアドバイスを受けられるでしょう。

査定は複数社に依頼するのがポイントです。通常、査定額は不動産会社によって異なるため、複数社の意見を聞くことでより適正価格を把握しやすくなります。早期に売却できるかどうかは不動産会社の対応にも影響を受けます。査定の様子を通じて丁寧さやノウハウ、コミュニケーション能力などの違いを確認することで、信頼できる会社を選びやすくなるでしょう。

複数社への依頼は手間がかかるため、一括査定サービスを検討してはいかがでしょうか。不動産の査定なら「イエカカク」の利用がおすすめです。イエカカクなら実績豊富な厳選された企業から最大6社に査定依頼ができます。インターネットによる査定依頼を通して全国で対応可能です。大切なマイホームを少しでも高く売りたいと考えている方は、ぜひイエカカクの無料査定をご活用ください。

③不動産会社と媒介契約する

売却価格の査定が終わったら、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約は、売買の仲介に関する取り決めを交わす契約です。一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類が宅地建物取引業法で定められています。違いを一覧にしたのが下記の表です。

【媒介契約の種類】

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
複数社との契約可能不可不可
有効期間なし3カ月以内3カ月以内
自己発見取引可能可能不可
業務状況の報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
指定流通機構への登録任意必須必須

一般媒介契約は、最も自由度が高い契約です。複数の不動産会社と契約でき、自分で見つけた買主と契約する自己発見取引も可能です。ただし、不動産会社に業務状況に関する報告義務はなく、積極的な取り組みを期待しにくい面もあります。

これに対して専任媒介契約は、1社のみと契約を結ぶ方式です。有効期間に定めがある上、不動産会社は2週間に1回以上業務状況を報告する義務があり、より積極的な販売活動が期待できる形式です。専属専任媒介契約は、最も強い拘束力を持ち、自己発見取引ができませんが、報告義務は1週間に1回以上と高頻度になります。

3つの契約は、指定流通機構の運営するレインズの扱いでも異なります。レインズは、不動産業者だけが利用できる不動産取引の情報交換サイトです。物件情報がレインズに登録されると、幅広い不動産会社から購入希望が寄せられる可能性があります。登録は一般媒介が任意であるのに対し、専任と専属専任は必須です。

一般媒介契約は複数の不動産会社と契約できるため販売チャンネルを広げられる可能性がありますが、それぞれの不動産会社が販売に前向きにならないケースも考えられます。売却を急いでいる場合や、自分で動く時間が少ないケースでは、積極的に不動産会社が売却活動を展開することが期待できる専任や専属専任が適している可能性があります。

④売却活動を展開する

媒介契約を締結した後は不動産を市場に出し、買主を見つける売却活動を展開します。売却活動は、「売り出し価格の設定」、「購入希望者の募集」、そして「内覧の準備・対応」の順で進めます。

1.売り出し価格の設定

不動産の売り出し価格は、査定額や自ら調べた周辺相場を参考に売主自身が決めます。売り出し価格は売却の成否を左右する重要な要素となるため、十分な検討が必要です。

高すぎる価格設定は売れ残りとなるリスクを招き、低すぎると本来得られたはずの利益を減らすことになります。売却を急ぐあまり安すぎる価格にするのは得策ではありません。やや高めの価格から始めて徐々に調整していくなど、不動産会社のアドバイスも参考にしながら、慎重に価格を決定しましょう。

2.購入希望者の募集

売り出し価格の設定に続いて、購入希望者を募集します。募集の際は多くの人に認知してもらうために、さまざまな方法を組み合わせるのが一般的です。

例えば、不動産ポータルサイトへの掲載、不動産会社の店頭やホームページ上での広告、チラシの配布などがあります。インターネット上では、物件写真や間取り図、周辺環境などの詳細を掲載できます。充実した設備や商業施設の情報など、より魅力的に見える内容を載せるのがポイントです。

一般媒介契約の場合は、レインズへの物件登録が任意となるため、より多くの潜在購入者にアプローチするため、不動産仲介会社に登録を依頼することをおすすめします。

3.内覧の準備・対応

不動産会社を通して購入を検討する方から連絡があれば、内覧に進みます。希望者が物件を直接見学する貴重な機会となるため、室内の清掃や整理整頓を徹底し、第一印象を良くすることが大切です。

内覧の日程は、不動産会社を通じて調整します。当日は、明るく清潔な雰囲気を演出するため、明るい照明をつけ、十分な換気をしておくことをおすすめします。物件の特徴や魅力を伝えるため、リフォーム履歴や周辺環境の情報なども用意しておくとよいでしょう。

対応する際は購入希望者の質問に丁寧に答え、物件の良さを伝えつつも、過度な売り込みは避けるのが無難です。見た目の良さやプライバシー確保のためにも、個人的な物は片付けておくことも重要です。

⑤購入希望者と条件交渉する

売却活動の過程で購入希望者から条件変更の提案があった場合、交渉に入ります。条件交渉は売買契約を合意に近づけるための重要なプロセスです。価格や引き渡し時期、付帯設備の取り扱いなどで両者の希望を擦り合わせ、互いに納得できる条件を見出すことが目標になります。交渉は不動産会社を通じて行うのが一般的です。

大切なのは、売主として事前にご自身の希望条件と譲歩できる範囲を明確にしておくことです。特に価格面では不動産会社と事前に調整しておくことで、スムーズな交渉と成約が期待できるでしょう。交渉を成功させるには、相手の考えもある程度考慮しつつ、自分の考えを固めて冷静な態度で臨むことがポイントです。

交渉中は不動産会社からの助言を求めることも有効です。プロの視点から、市場動向や法律面でのアドバイスを得ることで、より適切な判断が可能になります。

⑥買主と売買契約する

買主との条件交渉がまとまったら、売買契約に進みます。

不動産売買契約の一般的な流れは以下のとおりです。

売買契約の流れ
  1. 重要事項説明を受ける
  2. 契約内容を最終確認する
  3. 契約書に署名・捺印する
  4. 手付金を支払う
  5. 決済と引き渡しの日程確認をする

以上の流れで売買契約を締結します。全体の所要時間は2時間前後です。

重要事項説明書は、売買する物件の権利関係や現状、契約条件、法令上の制限などが記載された文書です。宅地建物取引業者が売主となる場合や仲介する場合などに示す義務があり、宅地建物取引士が説明することと決められています。

売買における大事な内容が記載されている文書のため、契約書とともに事前に不動産会社から書面案を受け取り、その中身を入念に確認しておくことをおすすめします。売買価格、決済日、引き渡し日、特約事項などの項目が合意した内容と相違がないか、慎重に確認してください。付帯設備の有無や状態、修繕箇所の取り扱いなども明確にしておくべきです。買主が住宅ローンを利用して購入する場合は、融資実行の条件や期限も確認します。金融機関の審査が通らなかった場合の取り扱いについても、あらかじめ取り決めておくことが重要です。

当日に契約書の内容を最終確認して署名・捺印をしたら、手付金の支払いを行います。手付金は売買代金の一部に充当されるほか、放棄することで売主からの契約解除も可能です。売買価格の10%前後が一般的ですが、手付金の取り扱いについても、契約不履行時の対応を含めて明確にしておく必要があります。

⑦決済・引き渡しを完了する

不動産売買契約の締結後、買主の購入資金の準備などが完了したら決済・引き渡しとなります。引き渡し完了までの一般的な流れは次のとおりです。

決済・引き渡し日の流れ
  1. 登記書類の確認
  2. 残金の決済
  3. 固定資産税などの精算
  4. 仲介手数料の支払い
  5. 住宅ローン完済手続き
  6. 鍵の受け渡し

大きな金額をやり取りする決済・引き渡しの手続きは、買主が住宅ローンを借りる金融機関や不動産会社の事務所で行うのが一般的です。所要時間は1時間程度です。売主や買主、不動産仲介会社に加え、司法書士が同席します。通常、所有権移転登記の手続きは、買主側が依頼した司法書士が引き渡し完了後に行います。

決済日当日は、登記手続きに必要となる書類などを確認した後、売買代金の残金の支払いを行います。この際、固定資産税と都市計画税の精算も行います。固定資産税と都市計画税の納税義務を負うのは、その年の1月1日時点の所有者です。売主が負担するその年の固定資産税と都市計画税のうち、決済日以降は買主の負担とするのが一般的です。

残金の支払いや税金の精算が終わったら、不動産仲介会社に手数料を支払います。売主に住宅ローンの残債がある場合は、買主から受け取った売却代金を元手に返済する手続きも行います。すべての手続きが終わったら、鍵や設備の説明書など必要書類を買主に渡して、引き渡し完了です。

⑧確定申告を行う

不動産を売却して利益が出た場合、確定申告を行う義務があります。譲渡所得税を申告・納税するためです。申告は不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に行わなければなりません。

譲渡所得税を計算するには、まず譲渡所得を算出します。計算式は次の通りです。

譲渡所得=売却価格ー(取得費用+譲渡費用)ー特別控除

取得費用には購入代金や購入時の経費も含まれます。譲渡費用は不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税などです。一定の条件を満たす場合はさらに特別控除を適用できます。例えば、売却した不動産がマイホームで、いくつかの要件を満たせば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けられる可能性があります。最大3,000万円を譲渡所得から控除できるため、大幅な納税負担の軽減が期待できるでしょう。

課税所得にかける税率は所有期間によって次のように変わります。なお、所有期間は1月1日時点で判断されるので注意が必要です。

  • 所有期間5年以下:短期譲渡所得で税率39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
  • 所有期間5年超:長期譲渡所得で税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

また、マイホームの場合は軽減税率の特例も適用可能です。売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているなどの条件を満たせば、課税所得6,000万円以下の部分の税率が14.21%(所得税10.21%、住民税4%) に軽減されます。

確定申告は複雑な計算を伴うため、不明点がある場合は税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。

【売却理由別】不動産売却を進める際の注意点

不動産売却の進め方や注意点は、売却理由によって異なります。住環境の変化、転勤、離婚、資金需要、相続など、理由に応じた適切な対応が求められます。

住環境の変化に伴い家を売るケース

住環境の変化に伴い家を売るケースには、さまざまな状況が考えられます。例えば、子どもの誕生・独立など「家族構成の変化」、地方への引っ越しや都市部への転居など「ライフスタイルの変化」、騒音や治安の悪化など「周辺環境の変化」などです。住環境の変化に伴い家を売却する際の主な注意点は以下のようなものが考えられます。

  • タイミングの見極め
  • 新居の確保と引っ越しの時期
  • 心理的なストレス

まず、タイミングの見極めが重要です。不動産市場の動向や季節的な需要の変化を考慮し、最適な売却時期を選ぶことで、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。例えば、転勤や入学シーズンで不動産需要が高まる春に売却できるようにすることが考えられます。

新居の確保と引っ越しの計画を綿密に立てる必要もあります。売却と購入のタイミングを上手に調整することが大切です。これまで支払っていた住宅ローンの残債がある状態で新しい家のローンを抱えると、二重ローンになり家計が圧迫されます。場合によっては、売却後に一時的に賃貸住宅に住むことを検討する必要もあるでしょう。

ご自身や家族に心の準備なことも忘れてはいけません。長年住み慣れた家を手放し、親しんだ地域から離れることが心理的なストレスとなる可能性があります。家族全員で十分に話し合い、新しい環境への不安を解消しておくことが大切です。

転勤に伴い家を売るケース

会社都合による転勤に伴い、長期間または永続的に勤務地が変更になるケースがあります。特に遠方で勤務することになった場合は、やむを得ずマイホームを売ろうと考える方も多いでしょう。転勤に伴い家を売却する際の主な注意点は以下のとおりです。

  • 売却を迅速に進める必要がある
  • 税制面の優遇措置を確認する

転勤がある場合は、時間的制約への注意が重要です。転勤の通知から実際の異動までの期間は比較的短いことが多く、売却手続きを迅速に進める必要があります。不動産会社の選定から価格設定、買主の募集まで、効率的に進めることが大切です。場合によっては、価格を低めに設定したり、不動産会社に買い取りを依頼したりすることを検討する必要もあります。

税制優遇措置の活用を考慮することも重要です。転勤した後に売る場合でも、譲渡所得から最高3,000万円まで控除が認められる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が使える可能性があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の1つです。

転勤による引っ越しの場合は業務引き継ぎや送別会など時間に追われる方も多いです。多忙になりますが、転勤先の住環境や不動産市場についても事前によく調べ、適切な住居選びをすることも、新生活に向けては大切になります。時間が少ないだけに、査定に当たっては一括査定サービスの利用がおすすめです。

離婚を機に家を売るケース

離婚するケースでは、夫婦で共同所有していた家を売って売却益を分配する、あるいは一方が他方の持分を買い取るといった形などが考えられます。離婚を機に家を売却する際の主な注意点は以下のとおりです。

  • 売却の合意形成
  • 住宅ローンの返済
  • 引っ越しのタイミング

不動産が共有名義の場合、すべての所有者が合意しないと売却できません。夫婦で共有名義にしているなら互いに売却の意思があるのかを確認することが大切です。合意が難しい場合は、売却を希望している方の持分を、所有し続けたいと考える方に買い取ってもらうことも視野に入れた話し合いが必要です。場合によっては弁護士など第三者による調整を検討します。

ローン残債の処理も重要な課題です。夫婦で組んだペアローンが残っている場合、返済責任をどのように分担するか、売却益でローンを一括返済するかなどを決める必要があります。売却しても完済できない場合は、離婚した後も協力して返済しなければならない可能性があります。場合によっては、一方が残債を引き受けて住み続けるといった選択肢も考えられるでしょう。売却を決める前に金融機関に残債や売却の可否を確認することも忘れないようにしてください。

ペアローンや共有名義ではなくても、離婚をきっかけに家を売るケースもあります。互いに引っ越しをするタイミングや住宅ローンの残債などを見極めながら、計画的に売却活動を進めることが大切です。

生活を立て直すために不動産を売るケース

生活を立て直すために不動産を売却するケースは、例えば、失業や事業の低迷、急な医療費の支出などにより、住宅ローンの返済が困難になった場合が考えられます。所有する不動産を現金化することで、当面の生活費を確保したり、債務を返済したりすることが目的となります。生活を立て直すために不動産を売却する際の主な注意点は以下のとおりです。

  • 必要額の把握
  • 適正価格の検討
  • 売却後の住居の確保

まず、必要額の把握が非常に重要です。生活の再建に必要な金額を正確に算出し、それに基づいて売却計画を立てます。住宅ローンの返済額、今後の生活費、新たな住居の確保にかかる費用などを詳細に計算します。

次に注意するべきなのは、適正価格で売ることです。経済的に逼迫している状況では、早期の資金化を優先するあまり、不動産を適正より安く売ってしまう懸念があります。複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価値を正確に把握した上で売却を進めることが大切です。必要以上に安い価格で売ることを避けるため、ご自身でも相場のチェックを行うことをおすすめします。

売却後の住居の確保も重要です。現在住んでいる家を売却する場合、その後の住まいをどうするかを事前に計画しておきましょう。賃貸住宅や親族宅への転居など、さまざまな選択肢を検討し、生活の安定を図ることが大切です。

相続した不動産を売るケース

相続した不動産を売るケースの理由としては、被相続人(亡くなった方)の債務の返済、相続税の納付、あるいは相続人間の遺産分割のためなどが考えられます。遠方の実家など管理が困難な物件を相続した場合に、維持費の負担を避けるため売却を選択することもあります。

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。逆算して効率的に手続きを進める必要があります。相続した不動産を売却する際の主な注意点は以下のとおりです。

  • 相続手続きが完了してから売る
  • 共有名義の場合は全員の合意を得る
  • 税の特例を確認する

まず、相続手続きの完了が重要です。不動産の名義変更(相続登記)を行わないと、売却手続きを進められません。法務局での相続登記完了を見計らって売却活動に入りましょう。共有名義の不動産を売るには、共有者全員の合意が必要です。複数の相続人がいる場合、売却の可否や代金の分配方法などについて、十分話し合っておくことが大切になります。

税の特例を確認することも重要です。例えば、相続で取得した不動産などの財産を売った場合、相続税額の一定額を譲渡所得を計算する際の取得費に加算できる特例です。相続開始日から3年10カ月以内に相続財産を売却することなどが条件となり、特例の適用で譲渡所得税の負担が軽減されます。

特例には、被相続人が住んでいた家を売った場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる制度もあります。相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることや売却代金が1億円以下であることなどが条件です。相続に関する法律や税務は複雑なため、必要に応じて弁護士や税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

不動産売却時の業者選びのポイント

不動産売却の成否は、不動産会社の質にも左右されるのが一般的です。業者を選ぶ際のポイントとして、大手か地域密着型か、売却実績、口コミ評判、そして免許の更新回数が挙げられます。各ポイントについて詳しく解説します。

大手か地域密着型か

不動産売却時の業者選びで「大手か地域密着型か」は重要なポイントです。大手不動産会社は全国的なネットワークと経験があり、多様な物件に対応できます。豊富な人材と資金、強い発信力により、多くの潜在的購入者にアプローチできる可能性が高く、安定したサービスが期待できます。

一方、地域密着型の不動産会社は、特定エリアに特化した深い知識と地元とのつながりが強みです。地域の特性や価格動向をより詳細に把握し、地元の購入候補者情報も豊富です。売主や買主との密接なコミュニケーションも期待できます。

広域での売却や高額物件、早期売却を希望する場合などは大手が適しています。一方、地元ならではの細やかな対応や、地域特性を活かした売却戦略を求める場合は地域密着型が向いているでしょう。大手では担当者の転勤が頻繁なため、長期的な関係性を重視する場合も地域密着型が適しています。

業者選びの際は、物件の特性や売却の緊急性、希望するサービスレベルを考慮し、それぞれの特徴を比較検討することが重要です。一括査定サービスなどで複数の業者と面談し、対応や提案内容を比較することで、最適な選択ができるでしょう。

売却実績

売却実績も業者選びにおいて重要なポイントです。実績が豊富な業者は、多様な物件や複雑な状況に対応してきた経験を持ち、効果的な売却戦略を立てる能力が高いと考えられます。市場動向の把握や価格交渉のスキルも磨かれている可能性が高く、スムーズな売却活動が期待できるでしょう。

実績を定量的に確認するには、まず、業者の公式サイトなどで年間売却件数を比較することが有効です。これは業者の規模や活動の活発さを示す重要な指標となります。成約事例が分かれば、ご自身の物件と似ている種類や価格帯、エリアの物件の売却実績を確認することで、その業者の得意物件も把握できるでしょう。

平均売却期間も物件を効率的に売却できる能力を示す指標として重要です。売り出した物件のうち実際に売却できた割合(成約率)も、適切な価格設定と効果的なマーケティング能力を反映する指標として注目すべきです。

これらの定量的な指標に加えて、過去の具体的な成功事例や、困難な案件をどのように解決したかなどの質的な情報も重要です。ニーズに合った業者を選ぶことで、より満足度の高い売却が実現できるでしょう。

口コミ評判

不動産売却時の業者選びでは、口コミ評判も見極めるポイントになります。口コミは、実際に業者のサービスを利用した人々の意見であり、業者の実力や信頼性を判断する上で貴重な情報です。口コミを参考にする際は、具体的なコメント内容に注目することが大切です。対応の丁寧さ、コミュニケーションの質、専門知識の豊富さ、問題解決能力などに関する評価は参考になるでしょう。

ただし、口コミには偏りがある可能性もあるため、複数の情報源を比較するようにしてください。不動産ポータルサイトの評価、SNSでの評判、知人からの直接的な評価など、さまざまな角度から情報を集めるのが理想です。ネガティブな口コミについては、その内容と業者の対応を見極めることも大切になります。適切に対応し、改善している業者であれば、むしろ信頼性の高さを示す指標となる可能性もあるからです。

免許の更新回数

不動産売却の業者選びにおいて、免許の更新回数は分かりやすいポイントの1つです。不動産業者は、宅地建物取引業法に基づいて国土交通大臣または都道府県知事から免許を取得する必要があり、この免許は5年ごとに更新されます。

免許の更新回数は、その不動産業者の経験と信頼性を示す指標です。更新回数が多いほど、長期にわたって業務を継続し、法令遵守や顧客満足度の維持に努めてきた可能性があることを意味します。

更新回数の確認は簡単です。例えば、「国土交通大臣(1)第〇〇〇〇号」という免許番号であれば、かっこ内の数字が1なので、国土交通大臣から新規に免許を取得して5年以内であることが分かります。かっこ内が2であれば、1度免許を更新しているということです。

ただし、数字が小さいからといって経験が少ないともいえません。例えば東京で活動していた不動産会社が神奈川にも営業所を設けた場合、東京都知事の免許から国土交通大臣の免許に変わります。この場合、かっこ内の数字は1になります。更新回数は参考にはしますが、その業者の実績や評判、提供するサービスの質なども総合的に評価することが重要です。

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不動産売却においては適切な価格設定が成功の鍵です。これを実現するには、正確な物件査定が不可欠であり、最も効果的な方法は、複数の不動産会社による一括査定を利用することです。一括見積もりで各社の査定額を比較し、市場価値を的確に把握できます。また、各社のサービスや提案内容も比較でき、最適な売却が実現できるでしょう。

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