「家を売りたい」と考えたとき、いくらで売れるかという点ばかりに目が行きがちですが、売却時に発生する手数料などの費用にも注意しておく必要があります。いつ誰がいくら負担することになるのか知っておかないと、あとから資金計画が崩れてしまうかもしれません。
この記事では、不動産にかかる費用について、特に高額になりやすい「仲介手数料」を中心に紹介します。相場や計算方法などのほか、安くできるかどうかもあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産売却でかかる仲介手数料の相場
不動産の売却にあたって、買主を探したり諸々の手続きをしたりすることを不動産会社に任せる人も多いでしょう。その場合、「仲介手数料」が発生します。仲介手数料は、売主と買主を仲介した不動産会社に対して、成功報酬として支払うものです。
仲介手数料の金額は、宅地建物取引業法によって上限が決められています。不動産会社は、その範囲内であれば自由に金額を設定することができます。なお、上限額は取引する物件の価格に応じて変わります。
具体的にいくらなのか、詳しく見ていきましょう。
仲介手数料の上限額の計算方法
宅地建物取引業法では、仲介手数料の上限額が以下のとおり規定されています。
取引物件価格(売買価格) | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売買価格×4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売買価格×3%+消費税 |
参考:国土交通省|宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)
400万円以下の部分は手数料率が異なり、計算が少々複雑です。そのため、売買価格が400万円を超えるときは、以下の速算式を使って計算するのが一般的です。
仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税
例えば、中古マンションを3,000万円で売却(消費税10%)した場合の計算は次のとおりです。
(3,000万円×3%+6万円)=96万円
96万円×10%=9.6万円
96万円+9.6万円=105万6,000円
この場合、仲介手数料の上限は「105万6,000円」となります。
仲介手数料の上限額早見表
「計算が面倒」「おおまかな数字を早く知りたい」という人は、以下の早見表を見てみましょう。売買価格ごとに、上述の式を使って計算しています。
物件取引価格(売買価格) | 仲介手数料の上限額(税込) |
---|---|
200万円 | 11万円 |
400万円 | 19万8,000円 |
1,000万円 | 39万6,000円 |
1,500万円 | 56万1,000円 |
2,000万円 | 72万6,000円 |
2,500万円 | 89万1,000円 |
3,000万円 | 105万6,000円 |
3,500万円 | 122万1,000円 |
4,000万円 | 138万6,000円 |
4,500万円 | 155万1,000円 |
5,000万円 | 171万6,000円 |
ここで算出された仲介手数料は、あくまで「上限額」です。実際に請求される仲介手数料の金額は、不動産会社によって差があります。
なお、直近で「空き家の流通促進」を目的とした法改正があり、2024年7月1日以降は800万円以下の宅地建物については上限を超える仲介手数料(最大33万円)を設定できるようになりました。
不動産売却の仲介手数料は誰が払うか
不動産売却の仲介手数料は、売主と買主のどちらが払うのが一般的なのでしょうか。答えは「両方」です。
売主は、自分が依頼した不動産会社が買主を見つけてきて契約に至った場合、仲介手数料を支払います。また、買主も、自分が依頼した不動産会社に仲介手数料を支払います。売主と買主が同じ不動産会社に仲介を依頼していた場合、不動産会社は両方からそれぞれ仲介手数料を受け取ることになります。
ただ、なかには一方からだけ仲介手数料を受け取って、もう片方には「仲介手数料無料」とする不動産会社などもあります。仲介手数料の有無や金額については、契約時によく確認するようにしましょう。
なお、売主も買主も、法律上定められている仲介手数料の上限額は同じです。
不動産売却の仲介手数料はいつ払うか
不動産を売却する際、仲介手数料はいつ支払うことになるのか気になる人もいるでしょう。
仲介手数料を支払うタイミングは、「売買契約が成立した時点」と「売買物件が引き渡された時点」の2回になるのが一般的です。それぞれ50%ずつ支払います。
仲介手数料は成功報酬(実際に買主が見つかって売買が成立したときだけ発生する対価)のため、媒介契約(買主を探してもらうための契約)を結んだだけでは発生しません。
不動産売却の仲介手数料は安くできるか
不動産売却の仲介手数料を安くしたい場合、不動産会社に値引き交渉をするのも1つの方法です。
ただ、値引き交渉をした結果、不動産会社が積極的に売却活動をしてくれなくなり、なかなか買主が見つからずに時間だけが過ぎていくといった事態になる可能性もあります。
不動産売却においては「仲介手数料が安ければ安いほどいい会社」というわけではなく、安心して任せられる不動産会社を選ぶことが大切です。
信頼できる不動産会社を選ぶためには、1社だけではなく、複数の不動産会社の話を聞いて比較してみるとよいでしょう。例えばイエカカクを使えば、かんたんな入力だけで複数社に一括で査定を依頼できます。
不動産売却でかかる仲介手数料以外の費用
不動産を売るときは、仲介手数料だけでなく以下のような費用も発生します。
費用 | 金額の目安 |
---|---|
売買契約書等の印紙税 | 1,000円~6万円程度 |
抵当権抹消登記費用 | 2万円程度 |
引っ越し関連の費用 | 5万円~20万円程度 |
譲渡所得税 | 売却で得た利益などによって異なる |
それぞれどんな費用で、いついくら支払う必要があるのか、詳しく見ていきましょう。
売買契約書等の印紙税
印紙税は、契約書や領収書などの文書に対してかかる税金です。不動産売却においては、売買契約書に所定の金額の収入印紙を貼ることで納付します。
納めるべき印紙税額(必要になる収入印紙の金額)は、売買価格に応じて以下のように決められています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
500万円超~1,000万円以下 | 軽減前:1万円 軽減後:5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 軽減前:2万円 軽減後:1万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 軽減前:6万円 軽減後:3万円 |
参考:国税庁|「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について
2027年3月31日までに作成される文書については軽減措置が適用され、上記のとおり通常時の半額になります。例えば2024年7月に3,000万円の不動産を売却した場合、印紙税は1万円です。
抵当権抹消登記費用
抵当権抹消登記費用は、売却する不動産に抵当権(住宅ローンで購入した場合に金融機関が設定している権利)がついている場合にかかる費用です。
抵当権を抹消するためには登録免許税(1,000円~2,000円程度)を納付して登記をする必要があります。自分で行うこともできますが、手続きに手間や時間がかかるため司法書士に依頼して代行してもらうのが一般的です。依頼費用は司法書士ごとに異なりますが、おおむね1.5万円~2万円程度が相場です。
抵当権の抹消は通常、不動産の引き渡しと同時に行われます。司法書士に依頼する場合は売却決定後、引き渡しの前に報酬を支払うことになります。
なお、不動産を売買したときは「所有権移転登記」も行いますが、こちらの費用は買主が負担するのが一般的です。
引っ越し関連の費用
今住んでいる家を売る場合は、新たな家に引っ越しするための費用がかかることも計算に入れておきましょう。
引っ越し費用の目安は5万円~20万円ですが、荷物量や時期などによって大きく異なります。複数の引っ越し業者から見積もりを取って比較してみるとよいでしょう。通常は引っ越し時もしくは引っ越し前に代金を支払います。
場合によっては、いったん仮住まいで暮らすために2回分の引っ越し費用が必要になったり、室内の残置物を撤去するために不用品回収業者に依頼する費用がかかったりすることもあるので注意しましょう。
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかる可能性があります。いくら利益が出たか、どれくらいの期間にわたって所有していたか、マイホームかどうかなど細かい条件によって税額が変わってくるため、よく確認しておく必要があります。
例えば2024年中に売った場合、その不動産を購入したのが2018年以前であれば「長期譲渡所得」、2019年以後であれば「短期譲渡所得」という扱いになり、以下のように税率が変わってきます。
- 長期譲渡所得…税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)
- 短期譲渡所得…税率39.630%(所得税30%+復興特別所得税+住民税9%)
ちなみに、マイホームを売った場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用できるため、税負担を抑えられます。
譲渡所得税は売却時ではなく、その後の確定申告のタイミングで支払います。
不動産売却をするならまずは一括査定を
不動産を売却する際は、不動産会社に支払う仲介手数料をはじめ、印紙税や登記費用などのコストがかかります。
仲介手数料は法律で上限額が決められていますが、実際にいくらかかるかは不動産会社によって異なります。「より高く売りたい」「コストを抑えて売りたい」という場合は、いくつかの不動産会社から話を聞いて比較してみるのがおすすめです。
イエカカクなら、最短60秒の入力を一度行うだけで、最大6社に不動産の査定を依頼することができます。査定額や仲介手数料、担当者の対応などさまざまな点を比較して、信頼できる不動産会社を選びましょう。