土地売買の契約の流れや必要書類、費用、注意点などを解説【売却主向け】

親から相続した土地があるものの、自分では使う予定がないから売ってしまいたいと考える人は一定数いるはずです。しかし、土地を売る経験は人生のうちで早々するものではない以上、何から手を付けたら良いか分からない、という人もいるかもしれません。そこで今回の記事では、土地売買の流れについて必要書類、費用、注意点を主に解説します。

目次

土地売買の流れ

土地売買の一般的な流れは以下のとおりです。個々の事例によって多少の差はありますが、基本的にはこの流れで進んでいくと考えましょう。

土地売買の流れ
  1. 土地の価格相場を調べておく
  2. 不動産仲介業者を選定
  3. 仲介業者と媒介契約を締結
  4. 対象の土地の売却価格を設定
  5. 土地の売却活動開始
  6. 見学の対応
  7. 土地の価格と売買条件の交渉
  8. 土地の売買契約書を締結
  9. 決済後、土地の引き渡し

1.土地の価格相場を調べておく

土地の価格相場の調べ方として考えられるものをいくつか紹介します。

  • 公示価格を調べる
  • 相続税路線価を調べる
  • 実勢価格を調べる
  • 固定資産税評価額を調べる
  • 一括査定サイトで調べる

公示価格、相続税路線価、実勢価格、固定資産税評価額自体は一般の人でも調べることができますが、データを入手するのがやや面倒に感じるかもしれません。また、実際に土地がどのぐらいで売れるかは、売るタイミングや土地自体の形状など、さまざまな要素に左右されます。

手間をかけずにより正確な土地の価格相場を知りたいなら、イエカカクの一括査定が便利です。画面の案内に従って必要事項を入力・送信すれば、最大6社の不動産会社から査定結果が受け取れます。今すぐ土地を売る予定がなくても、大体の価格相場を知っておきたいという場合は、一度お試しください。

2.不動産仲介業者を選定する

大体の価格相場が把握できたら、不動産仲介業者、つまり、売却活動を依頼する不動産会社を選びましょう。不動産仲介業者を選定する際のポイントは以下のとおりです。

  • 実績が豊富である
  • 担当者の対応が親切でていねい
  • 土地と同じ地域に営業所、店舗がある
  • インターネット、SNSでの広告に力を入れている
  • 提示する査定額に根拠がある

なお、個人間で土地を売買することは、理論上は可能です。ただし、不動産仲介業者に依頼した後で、知り合いや親族から買いたいと相談があった場合は注意しなくてはいけません。専属専任媒介契約を結んでいた場合、契約違反としてトラブルになるおそれがあるためです。

詳しくは後述しますが、専属専任媒介契約とは、不動産仲介業者に依頼する際の契約方法の1つで、一般媒介契約や専属専任媒介契約に比べ、規制が厳しくなっています。そのため、知り合いや親族に売る場合でも、不動産仲介業者を通さなくてはいけません。知り合いや親族に不動産仲介業者を通さずに売ることも可能ですが、その場合は以下の点に注意しましょう。

  • 知り合いや親族など、素性のわかる相手に売る
  • 贈与、脱税とみなされないよう適正な価格を設定する
  • 契約書に問題がないか注意する
  • 買主が住宅ローンを組めないケースもあるので十分な資金があるか確認する

いずれにしても、トラブルを回避する観点では司法書士や税理士などの専門家への相談が必須です。「どうしてもこの土地が欲しい」など直々に相談があったなど、特別な事情がある場合を除いては、基本的に不動産仲介業者を通して土地を売るほうが無難でしょう。

3.仲介業者と媒介契約を締結する

依頼する不動産仲介業者が決まったら、正式に媒介契約を締結します。なお、媒介契約には次の3種類があるので、状況に応じて選びましょう。

項目/契約の種類一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
複数社への依頼            可能     不可     不可
自己発見取引           可能     可能     不可
契約期間           制限なし(ただし3ヵ月以内が推奨されている)      3ヵ月以内3ヵ月以内
レインズ登録                       義務なし(任意)媒介契約締結から7日以内媒介契約締結から5日以内
販売活動の報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上

前述したように、知り合いや親族に土地を売る可能性があるなら、自己発見取引(自分で買手を見つけてくること)が可能な一般媒介契約、専任媒介契約のほうが適しています。逆に、そのような予定がなく、他の不動産仲介業者に並行して頼むつもりもないなら、専属専任媒介契約を前提に考えましょう。

不動産仲介業者にとっても、専属専任媒介契約であれば売買が成立した場合の仲介手数料が得られる可能性が高くなるため、有利になります。そのため、専属専任媒介契約を勧められることがありますが、あくまで自分の考えや予定に合わせて適した契約を選んで構いません。

関連記事:不動産売却の媒介契約とは?一般媒介と専任媒介の違いやメリット・注意点も

4.売却価格を設定する

不動産仲介業者と契約を結んだら、売却価格を設定します。不動産仲介業者による査定額をもとにして設定しましょう。

ここでポイントとなるのは、あまりに高過ぎる、もしくは安すぎる価格を設定しないことです。周辺の相場に比べてあまりに高過ぎる価格を設定すると、なかなか買手が付かず、売買活動が長期化する恐れがあります。また、低すぎる価格を設定するのも「もしかしたら売り急がなくてはいけないネガティブな事情があるのでは」と敬遠されがちです。

なお、公益財団法人東日本不動産流通機構によれば、土地の売却にかかる日数の平均は、2023年の時点で79.0日となっていました。3ヵ月弱といったところなので、価格を設定する際は「3ヵ月程度販売活動をすれば売れそうな価格」を目安にしましょう。

5.売却活動を開始する

価格を決めたら、売却活動を開始します。具体的に行う活動の例は以下のとおりです。

売却活動の例
  • 不動産流通機構(レインズ)に物件情報を登録する
  • チラシをポスティングする
  • Webサイト、SNSに物件情報を投稿する
  • 住宅情報誌などに広告を出す

不動産仲介業者によってもどのような売却活動を行うかは異なるので、事前に相談しておくと良いでしょう。また、専属専任媒介契約や専任媒介契約を結んでいた場合は、定期的に売却活動の状況が報告されます。電話やメールで行われるのが一般的ですが、報告を受けたとき以外にも気になることがあったら、随時相談してみましょう。

6.見学の対応をする

売却活動を進めていくと、購入を検討している人から見学したい旨の問い合わせが入るかもしれません。その場合は対応が必要になります。以下の点に気を付けて準備をしておきましょう。

  • 残置物などがあれば可能な範囲で片付ける
  • 当日はできるだけ現地に立ち会い、検討している人からの質問に答える

具体的な進め方は、事前に不動産仲介業者の担当者とすり合わせておくのをおすすめします。

7.売買条件の交渉をする

購入希望者が現れたら、売買条件の交渉に移ります。実際は、不動産仲介業者から、以下の項目が記載された購入申込書や買付依頼書などの書類を渡されるので問題がないか確認しましょう。

記載項目
  • (購入希望者の)氏名・住所
  • 申込日
  • 購入希望条件
  • 対象物件情報
  • 購入希望金額
  • 手付金・内金
  • 売買契約締結希望日
  • 引渡・決済希望日
  • 融資利用の有無と特約内容
  • その他の条件

そのうえで、購入希望者と条件の交渉を行い、同意が得られたら売買契約を結ぶ場所と日時を決定します。その際に注意したいのが「都合の悪いことがあれば伝えること」です。専門用語では瑕疵といいますが、土地を含めた不動産を引き渡したあとに隠れた瑕疵が見つかった場合、売主が買主に対して損害賠償責任を負うことになります。土地について考えられる瑕疵の例は以下のとおりです。

瑕疵の例
  • 地盤が歪んでいて不安定
  • 有害物質による土壌汚染がある
  • ゴミ、廃材などの残置物が多い
  • 過去に近隣で殺人事件、大規模事故があった
  • 近隣に迷惑行為をする人や反社会組織の構成員等が住んでいる

8.売買契約書を締結する

購入希望者との間で条件に合意できたら、売買契約書を締結します。契約を締結したら、購入者から手付金を受け取るのが一般的な流れです。

なお、契約を締結する前には、内容を確認しておきましょう。特に重点的に確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 売買の目的物および売買代金
  • 手付金の金額
  • 売買代金の支払い時期や方法
  • 手付解除(解約手付)
  • 契約違反による解除、違約金
  • 融資利用の特約
  • 抵当権等の抹消
  • 所有権移転登記等
  • 所有権の移転の時期
  • 引渡しの時期
  • 引渡し完了前の滅失、毀損
  • 売買対象面積、測量、代金精算
  • 境界の明示
  • 公租公課等の分担
  • 瑕疵の責任

他にも、不明点があれば逐次不動産仲介業者に質問しておきましょう。

9.決済・引き渡しを行う

売買契約書を取り交わした後は、残額の決済と土地の引き渡しを行います。

土地の売買に必要な書類一覧

土地の売買に必要な書類は以下のとおりです。

必要書類概要必要なタイミング取得方法
身分証明書運転免許証、マイナンバーカードなど司法書士に所有権移転登記等の申請を依頼する際各自用意
確定測量図、境界確認書売却に先立って測量を行い、作成する売却を検討したらなるべく早い段階で土地家屋調査士に依頼   
登記済権利証(登記識別情報通知)土地の法的な所有権が誰にあるかを明らかにするための書類売却活動を行う前までに各自用意(紛失した場合は不動産仲介業者に早めに相談)  
固定資産税の納税通知書固定資産税精算金を計算するために必要となる売却活動を行う前までに各自用意(紛失した場合は市区町村役場に問い合わせ)
固定資産評価証明書所有権移転のための登録免許税を計算するために必要売却活動を行う前までに    各自用意(市区町村役場で取得可能)
印鑑証明書印鑑が実印であることを証明するための書類           引渡日前の3ヵ月前以内に取得各自用意(市区町村役場で取得可能)
住民票現住所を証明するための書類特に制限はないが、なるべく早めに各自用意(市区町村役場で取得可能)

他にも状況に応じてここにはない書類を用意するよう求められることがあります。不動産仲介業者の担当者とも相談し、抜け・漏れがないようにしましょう。

土地の売買にかかる諸経費

土地の売買にはさまざまな税金や経費がかかる点にも注意が必要です。税金については後述するので、ここでは主な諸経費について解説します。

概要
仲介手数料土地を含めた不動産の売買が成立した際に、不動産仲介業者に支払う成功報酬
司法書士への報酬所有権移転登記を依頼する際に報酬として支払う
建物の解体費用売却する土地の上に建物があり、解体する場合に必要になる

仲介手数料

仲介手数料とは、土地を含めた不動産の売買が成立した際に、不動産仲介業者に支払う成功報酬のことです。法律(宅地建物取引業法)により上限額が以下のように決まっています。

売買価格報酬額の上限
200万円以下売買価格×5%
200万円超400万円以下売買価格×4%+2万円
400万円超売買価格×3%+6万円

※実際には上記に消費税が加わる

たとえば、土地が2,000万円で売れた場合、仲介手数料の上限額は72万6,000円(=(2,000万円×3%+6万円)×1.1)となります。

司法書士への報酬

土地を売却するにあたっては、所有権移転登記を行わなくてはいけません。これにより、正式に土地の所有権が購入者に移ったことを明確にできます。所有権移転登記は自分で行うことも可能ですが、法律の知識が必要なうえに、必要書類の作成・取り寄せが必要になるため、司法書士に依頼するのが一般的です。

なお、依頼する司法書士によっても報酬は異なります。事前に見積もりを取ったうえで依頼する司法書士を決めましょう。

建物の解体費用

売ろうとする土地の上に建物がある場合、建物を解体してから売るなら解体費用がかかります。個々の事例によっても解体費用は異なりますが、100万円以上かかるケースも珍しくありません。

複数の解体業者から見積もりを取るとともに、自治体の補助金が検討できないかも調べましょう。状況によってはあえて解体しないで売却するのも選択肢に入れ、不動産仲介業者と相談するのをおすすめいたします。

関連記事:家屋の解体にかかる料金相場はいくら?安く抑えるコツもわかりやすく解説

土地の売買にかかる税金

土地の売買にかかる税金は以下のとおりです。

概要
印紙税売買契約書など、法律で定められた一定の文書にかかる税金。収入印紙を貼付して納める
登録免許税所有権移転登記を行う際に、法務局に支払う手数料
譲渡所得税土地を売却して売却益が生じた場合に、その売却益に対してかかる所得税
消費税仲介手数料に対して消費税がかかる

印紙税

印紙税とは、売買契約書など、法律で定められた一定の文書にかかる税金のことです。収入印紙を貼付し、そこに消印する(印鑑を押したり、サインしたりして再利用できなくなする)形で納めます。なお、印紙税額は契約金額により異なる仕組みです。印紙税とは

契約金額印紙税額
10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1千円
100万円を超え500万円以下2千円
500万円を超え1千万円以下1万円
1千万円を超え5千万円以下2万円
5千万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円

参考:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

登録免許税

登録免許税とは、土地などの不動産の売買にあたって行う所有権移転登記を行う際にかかる税金のことです。実際は法務局に納めます。土地の売買に伴う所有権移転登記の場合、登録免許税の税率は以下のとおりです。

課税標準税率軽減税率(措法72)
土地の固定資産課税台帳に記載された金額1,000分の20    令和8(2026)年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15

例えば、固定資産台帳に記載された金額が2,000万円の土地を売却する場合、登録免許税は4万円(軽減税率が適用されるなら3万円)になります。

譲渡所得税

土地の売却に当たり売却益が出た場合、譲渡所得税と住民税を売却の翌年に支払います。土地を手放した時点での所有期間によって、以下のように税率が異なる仕組みです。

概要税率
短期譲渡所得売却した年の1月1日時点で「所有期間5年以下」の場合所得税:30.63%
住民税:9%  
長期譲渡所得売却した年の1月1日時点で「所有期間5年超」の場合          所得税:15.315%
住民税:5%

消費税

消費税は、不動産仲介業者に対して支払う仲介手数料についてかかります。なお、土地の売買に関しては、消費税はかかりません。また、建物の売買に関しては新築の場合はかかりますが、中古の場合は売主と買主の立場によって扱いが異なるため確認しましょう。

売主買主消費税の扱い
個人個人課税されない
法人(不動産会社やその他の事業を営む会社など)課税される
不動産会社個人課税される
法人(不動産会社やその他の事業を営む会社など)課税される

土地を売買する際の注意点

土地を売買する際の注意点として、以下の4つについて解説します。

  • 相続した土地は相続登記を完了させる
  • 共有名義の場合は、共有者の合意を取る
  • 貸している土地の場合は売値が下がることが予想される
  • 建物を解体するかはよく検討する必要がある

相続した土地は相続登記を完了させる

相続した土地を売却する場合は、相続登記を完了させておきましょう。相続登記が済んでいないと、土地所有者は元の持ち主(例:亡くなった家族)のままとなるため、スムーズに土地売却が進められません。また、令和6(2024)年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。相続によって土地などの不動産を取得したら、3年以内に相続登記の申請をしないと10万円以下の過料が科せられるため注意が必要です。

共有名義の場合は共有者の合意を取る

共有名義の土地の場合、自分以外の共有者の合意なく土地を売却してはいけません。1人でも反対する共有者がいるなら、全体での売却はできない点に注意が必要です。

仮に、同意が得られなかった場合は、自分の持ち分だけを売ることもできます。他の共有者が買い取ってくれることもあるので、事前に相談してみましょう。なお、土地だけを売るのであれば、分筆(登記簿上1つになっている土地を複数に分けること)してから売却する方法も考えられます。

ただし、この方法を取る場合は、誰がどの範囲を所有するかで揉めたり、土地家屋調査士による測量が必要になったりなど、費用と時間がかかる点に注意が必要です。

貸している土地の場合は売値が下がることが予想される

貸している土地の場合は売値が下がることにも注意が必要です。貸している=借地権、地上権が設定されている土地のことを底地と言います。そして、底地は第三者に貸している以上、取得したとしても自由に使うことはできません。自由に使うことができない以上、需要も高くならないため、売値も下がると考えましょう。なお、底地を売却したい場合は、不動産会社に買い取ってもらうのが現実的な方法です。不動産会社によっても対応状況には差があるので、事前に確認しましょう。

建物を解体するかはよく検討する必要がある

建物を解体するかは、よく検討する必要があります。

解体してから売れば、購入希望者にとってその後どうやって活用するかイメージがしやすく、買いやすい物件になるのがメリットです。一方で、売却する側にとっても、解体費用を経費にできたり、トラブルを防げたりなどのメリットがあります。

ただし、建物を解体してから売ると固定資産税が高額になるうえに、自己資金ではなくローンで解体費用を払う場合は住宅ローンに比べ金利が高めな点に注意が必要です。

空き家を解体したほうが良いケースとしないほうが良いケースをまとめたので参考にしてください。

解体したほうが良いケース・早く売却したい
・管理する手間を省きたい
・建物が古すぎて、老朽化や耐震構造が心配
解体しないほうが良いケース・購入希望者がなかなか現れない
・築20年以内、もしくは古民家など比較的状態、条件が良い建物が建っている見出しの内容を説明

関連記事:家(戸建て)の解体費用の相場はいくら?安く抑えるためのポイントを紹介

不動産売却の一括無料査定はイエカカクがおすすめ

土地を含めた不動産の売却は、大半の人にとって一生で何度も経験することではありません。それだけに、納得がいく価格で売ってくれて、しかも信頼ができる不動産会社を見つけることが重要です。

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土地を売る予定がある、ゆくゆくは売ることを考えているなら、ぜひ一度お試しください。

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