住宅ローンを組んで家を買ったものの、何らかの理由で返済ができない場合、家を売らなくてはいけません。売却金額が住宅ローンの残りよりも高ければ問題ありませんが、そうでない場合は任意売却もしくは競売のいずれかの方法をとることになります。この記事では、任意売却と競売の違いについて、さまざまな観点から解説します。住宅ローンのことでお悩みならぜひ参考にしてください。
任意売却と競売の違い
任意売却とは、何らかの理由で住宅ローンが返済できなくなった場合に、金融機関の許可のもと、ローンが残った状態で家を売却することを指します。一方、競売とは、住宅ローンを滞納している利用者からの回収が難しいと判断した場合、金融機関が裁判所に申し立てをしたうえで、その家を売ってしまうことです。
これらは、いずれも「住宅ローンを返済できていない場合」という前提があることでは共通していますが、細かい点では異なるので表にまとめました。
任意売却 | 競売 | |
---|---|---|
売却価格 | 相場に近い | 相場より3割程度安くなる |
残債額 | 少ない | 多い |
残債の返済方法 | 分割払い(交渉可能) | 一括返却 |
プライバシー | 保たれる | 公開される |
退去日 | ある程度調整はできる | 退去日が強制的に決まる |
引越し費用の負担 | 交渉次第では出る | 出ない |
居住の継続可否 | 家賃を払って住む方法が取れる | 不可 |
売却価格
任意売却の場合、相場に近い価格で不動産を手放すことが可能です。競売の場合は、個々のケースにより異なりますが、相場の7割程度で売却されることが多くなっています。できるだけ高い金額で売るなら、任意売却を選択できるうちに手放したほうが良いでしょう。
残債額
残債額とは、不動産を売却した後に残る住宅ローンの返済額のことです。例えば、住宅ローンの返済額が3,000万円ある段階で任意売却により不動産を手放し、売却価格が2,700万円だった場合は、残債額は300万円になります。残債額が少ないほど、後々の返済が楽になるのでできるだけ少なくしましょう。
具体的な金額は個々の事例により異なりますが、任意売却の場合だと比較的残債額が少なくなります。一方、競売の場合、売却代金からさまざまな経費が差し引かれるため、多くなりがちです。
残債の返済方法
残債の返済方法についても、任意売却と競売では差があります。任意売却の場合、分割払いの交渉が可能です。毎月の返済額や返済期間など、返済条件を細かく交渉できるので、無理のない形で完済を目指せます。
一方、競売の場合は一括返済が求められるため、返済ができない場合は自己破産を選択せざるを得ません。
プライバシー
任意売却の場合、任意売却で家を手放すことを知っているのは不動産会社の担当者だけです。販売活動は一般的な不動産の売買と同様に行われるため「住宅ローンを返済できなくなって家を売る」という事実が知られることはまずありません。
一方、競売の場合は裁判所により物件の情報が公開されます。裁判所の閲覧室に掲示されるうえに、裁判所の「不動産競売物件情報サイト」に掲載される流れです。広く情報が公開されるとは言えませんが、「住宅ローンを返済できなくなって家を売る」という事実が知られる可能性はあることに注意が必要です。
退去日
退去日についても、任意売却と競売とでは大きな差があります。任意売却の場合、交渉次第で退去日を調整することが可能です。「子どもの学校の都合で、学期が終わってから引っ越しをしたい」など、家族の予定に合わせて退去日を決めることもできます。
しかし、競売の場合、裁判所が決めた強制執行の日時までには立ち退いていないといけません。強制執行を拒否することはできないので、事実上選択権はないと考えましょう。
引越し費用の負担
任意売却の場合、引っ越し費用の一部を金融機関に負担してもらえる可能性があります。手元に金銭がなく、引っ越しができそうにない場合は、まずは相談してみましょう。一方、競売の場合そのような状況は期待できません。
居住の継続可否
任意売却の場合、金融機関や不動産会社との交渉次第では、家に住み続けることもできます。具体的には、以下の方法を使いましょう。
リースバック | 不動産を売却したうえで、新しい所有者と賃貸借契約を結んで住み続ける |
親族間売買 | 子どもや兄弟姉妹などの親族に家を買ってもらい、賃貸借契約を結ぶ(無償または格安の家賃で住み続けられる) |
一方、競売の場合は家に住み続けることは非常に難しいのが実情です。競売による購入者との交渉次第でリースバックができる可能性はありますが、交渉が決裂した場合は自分で住む家を探す必要があります。
なお、任意売却・競売ともに引っ越し費用がないからといってそのまま住み続けていると、すべての家財は家から持ち去られ、鍵も交換されてしまいます。万が一、執行官ともみ合いになったら、公務執行妨害や傷害罪で逮捕されるおそれがあるので注意してください。
任意売却が向いている人の特徴
任意売却が向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 住宅ローンを滞納していて、金融機関から催促を受けている
- 病気などの理由で働けなくなってしまった
- できるだけ今の家には住み続けたい
- 裁判所から「競売開始決定通知書」が届いた
- 家の資産価値が低く、住宅ローンの残債が多い
任意売却は、交渉次第では家に住み続けたり、自分に有利な条件で返済を続けたりすることが可能です。また、競売に移行してしまうと、自分で決められることがどんどん狭まって、最終的には住む家もなくなってしまいます。ある程度時間的猶予がある人なら、任意売却で家を手放すことを考えましょう。
競売が向いている人の特徴
あえて言うなら、競売が向いているのは「任意売却ができなかった、できない事情があった人」です。
競売に移行すると、自分の意思で決められることはほとんどなくなるため、できるだけ任意売却ができるうちに手放すのが得策です。任意売却の期限は、競売の開札日前日までとなっているため、できるだけ早い段階で不動産会社に相談しましょう。
なお、住宅ローンの対応が始まってから、競売までは以下のように進んでいきます。
期間 | 段階 |
---|---|
滞納1ヵ月~3ヵ月 | 督促状・来店依頼の送付 |
滞納3ヵ月~6ヵ月 | 催告書・最終通告の送付 |
滞納7ヵ月~ | 期限の利益(分割払いの権利)喪失 |
期限の利益喪失から1ヵ月 | 代位弁済(保証会社による一括返済)通知 |
期限の利益喪失から2ヵ月~3ヵ月 | 競売開始決定通知の送付 |
競売開始決定通知から1ヵ月~2ヵ月 | 裁判所執行官の現況調査 |
競売開始決定通知から2ヵ月 | 競売の期間入札通知の送付 |
競売開始決定通知から2ヵ月~3ヵ月 | 期間入札の公告 (入札期間の一般公開) |
入札期間開始~2週間程度 | 入札を募る その後開札期日に開札 |
実際に任意売却の交渉ができるのは「期限の利益の喪失」の後であるため、時間に余裕がない中で売却活動を済ませなくてはいけません。
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住宅ローンを返済してきたものの、どうしても返済できない事情ができた場合、できるだけ早く任意売却を選択しましょう。返済条件の交渉など、自分にとって有利に進められることが多いためです。また、任意売却を選択する場合、自分の家が大体どのぐらいの価格で売れるかも知っておきましょう。
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