相続した不動産を売却する流れ|必要書類や税金・注意点について解説

不動産を相続した場合、自分や家族が住まない場合は最終的に売却することになります。売却に当たっては、さまざまな書類が必要なうえに、税制上の優遇策を知らないと損をしかねないので注意が必要です。この記事では、相続した不動産を売却する際の注意点について、詳しく解説します。不動産を相続した人、相続する予定のある人はぜひ参考にしてください。

目次

相続した不動産を売却する流れ

相続した不動産を売却する際の基本的な流れは以下のとおりです。

相続不動産売却の手順
  1. 名義を変更する
  2. 価格査定を受ける
  3. 不動産会社と媒介契約を締結する
  4. 売却活動を開始する
  5. 買付証明書を受領し、売買契約を締結する
  6. 引っ越したうえで残金の決済をし、相手に引き渡す
  7. 翌年に確定申告をする

個々のケースによってもかかる期間は異なりますが、一般的には名義変更から引き渡しまで半年程度かかります。ただし、なかなか購入希望者が現れず、売却活動が長引いた場合はその分後ろ倒しになるでしょう。

各種手続きの期限

不動産を相続したら、期限までにさまざまな手続きを済ませないといけません。主要な手続きについて、概要と期限をまとめました。

手続き概要期限
相続放棄相続財産となる資産・負債の一切を引き継がず、放棄すること相続人となった事実(被相続人が亡くなったこと)を知ってから3ヵ月以内
限定承認相続財産の範囲内で債務を弁済し、残った分だけ相続すること相続人となった事実(被相続人が亡くなったこと)を知ってから3ヵ月以内
準確定申告被相続人が1月1日から亡くなった日までに確定した所得金額および税額を計算したうえで行う確定申告相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったこと)を知った日の翌日から4ヵ月以内
相続税の申告・納税財産を引き継いだ人が支払うべき相続税を計算し、申告・納税する相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったこと)を知った日の翌日から10ヵ月以内
遺産分割協議相続人が全員で遺産をどのように分けるかを話し合う法律上はいつでも可能 ※現実的には、相続税の申告期限までには行うべき

なお、遺産分割協議は以下のケースで必要になります。

  • 相続人が複数いる
  • 遺言書がない
  • 遺言書はあるが、その内容とは違う形で遺産分割をしたい

相続した不動産の売却に必要な書類

相続した土地・建物などの不動産を売却する場合、書類が必要になります。ただし、状況によっても必要となる書類が異なるため、詳しく解説しましょう。

名義変更の際に必要な書類

まず、相続した不動産を売却するには、名義変更をしなくてはいけません。名義変更の方法によっても必要な書類は異なるので、自分たちが使った方法に合った書類を用意しましょう。

名義変更の方法必要書類
法定相続・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)
遺言による分割・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)
遺産分割協議による分割・遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)

なお、遺言が自筆証書遺言だった場合は、家庭裁判所での検認が必要となります。検認とは、遺言に偽造・改変など問題点がないか、内容を確認してもらう手続きのことです。

売却を依頼する際に必要な書類

相続する不動産の種類によっても、必要な書類は異なる点に注意が必要です。リスト形式でまとめたので、実際に書類を用意する際にお役立てください。

必要書類土地戸建マンション
売買契約書
登記簿謄本または登記事項証明書
物件購入時の重要事項説明書
登記済権利書または登記識別情報
土地測量図・境界確認書
物件の図面
設備の仕様書
建築確認済証および検査済証
マンションの管理規約または使用細則
マンション維持費関連書類

不動産を譲渡した場合の譲渡所得の計算には、売買契約書など取得費を証明できるものがないといけません。取得費が不明な場合、「概算取得費」といって、不動産を売却して得た金額の5%相当を取得費として算定する方法があります。

ただし、この方法だと課税対象となる金額が大きくなることから、本来の譲渡所得よりも大きくなる恐れがあるので注意が必要です。以下の書類を用意したうえで、購入時の状況説明と契約書類等の紛失理由を書いた「申述書」を確定申告書に添付しましょう。

  • 住宅ローンの支払いに使っている銀行口座の通帳・利用明細
  • 住宅ローンを借りた金銭消費貸借契約書のコピー、ローンの償還表等
  • 全部事項証明書の乙欄(抵当権の設定金額がわかる)
  • 購入時の不動産価格が記載されているパンフレット

相続した不動産を売却する際に発生する税金

相続した不動産を売却する際には、さまざまな税金が発生します。ここでは、具体的な税金として、以下の3つについて解説します。

印紙税

印紙税とは、不動産売買契約書など、法律で定められた一定の書類にかかる税金のことです。必要な税額分の印紙を売買契約書に貼付し、消印する形で納付します。

なお、必要な印紙の金額は契約金額により異なる仕組みです。

契約金額本則税率軽減税率
100万円を超え200万円以下のもの400円  200円
200万円を超え300万円以下のもの1千円  500円
300万円を超え500万円以下のもの2千円  1千円
500万円を超え1千万円以下のもの1万円  5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの2万円  1万円
5千万円を超え1億円以下のもの6万円  3万円
1億円を超え5億円以下のもの            10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの            20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円 32万円
50億円を超えるもの60万円 48万円

軽減税率は、請負に関する契約書で、以下の条件をすべて満たすものに対して適用されます。

  • 記載金額が100万円を超える
  • 平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産を売却して得られた利益に対してかかる所得税です。「譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」という式で計算できます。なお、税率は短期譲渡所得と長期譲渡所得のどちらに当てはまるかによって異なるため注意しましょう。

概要税率
短期譲渡所得売却した年の1月1日現在で「所有期間5年以下」  30.63%
長期譲渡所得概要売却した年の1月1日現在で「所有期間5年超」15.315%

住民税

住民税とは、公共サービスを受けるための対価として、都道府県や市区町村に納める税金です。不動産の売却にあたって黒字=譲渡所得が生じた場合、譲渡所得税と同様に納付します。なお、税率は以下のとおりです。

概要税率
短期譲渡所得売却した年の1月1日現在で「所有期間5年以下」  9%
長期譲渡所得概要売却した年の1月1日現在で「所有期間5年超」5%

相続した不動産を売却する際に利用できる特例

相続した不動産を売却する際には、以下の税制上の特例が利用できます。条件に当てはまるなら積極的に活用しましょう。

H3. 相続してから住んでいた場合

まず、相続してからその不動産に住んでいた場合に利用できる特例は以下のとおりです。

特例概要適用条件
3,000万円特別控除相続後に居住している不動産を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円が控除される・自分が住んでいる家屋、敷地・借地権を売却する
・家屋を取り壊し、売却まで住居以外に使っていない
・取り壊してから1年以内に契約
・住まなくなってから3年目の12月末までに売却する
・売主と買主が夫婦・親子などの家族ではない
・売却した年に住宅ローン控除を受けていない
取得費加算の特例家を相続した日から3年10ヵ月以内に譲渡した場合、譲渡所得税から一定額を差し引ける。相続してからその家に住んでいない場合にも使える・相続または遺贈によって取得した財産である
・相続時に相続税が課されており納税している
・相続開始日の翌日から3年10ヵ月以内に売却している

相続してから住んでいない場合

次に、相続してからその不動産に住んでいない場合に利用できる特例は以下のとおりです。

特例概要
相続空き家の3,000万円特別控除相続後に居住せず空き家になった不動産を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円が控除される・昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
・マンションではない
・売却時の耐震基準に適合した家屋である
・相続開始直前まで被相続人が居住していた家屋である
・相続開始直前に被相続人以外で居住していた者がいない
・これまで人に貸していない
・相続日から3年目の12月末日までに売却する
・平成28年4月1日から令和5年12月31日までに売却する
・売却価格が1億円以下である

相続した不動産を売却する際の注意点

相続した不動産を売却する際には、さまざまな注意点があります。ここでは、具体的に注意すべき点として、以下の4点について解説します。

共有名義の不動産売却では全員に同意を得る

相続した不動産が共有名義だった場合は、共有者全員の同意がないと売却できません。同意を得る際は、売ること自体の同意に加え、価格についても同意を得る必要があります。

「〇円以上なら売る」という最低ラインを決めておくと、値引き要請があった場合でもスムーズな対応が可能です。ただし、最低ラインに近い金額を提示された場合は、念のために他の相続人にも話をし、了解を得ておくと良いでしょう。

取得費は引き継がれる

相続不動産の取得費は、そのまま引き継がれることに注意が必要です。前述したように、個人が不動産を売却した際は、譲渡所得を計算しなくてはいけません。その際は取得費を求める必要がありますが、土地については購入額をそのまま使います。一方、建物については購入額から減価償却費を控除した価格を取得費としなくてはいけません。ここまでの話をまとめると、取得費は以下の計算式で求められます。

取得費=土地購入額+(建物購入額-減価償却費)

所有期間は引き継がれる

所有期間についても、親の購入日を引き継ぐことになるため注意が必要です。前述したように、譲渡所得税および住民税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得のどちらに当てはまるかによって異なります。

概要税率(所得税、住民税の合計)
短期譲渡所得売却した年の1月1日現在で「所有期間5年以下」39.63%  
長期譲渡所得     売却した年の1月1日現在で「所有期間5年超」      15.315%  

そして、相続で取得した不動産の場合、親が購入した日を起点に短期譲渡所得・長期譲渡所得のどちらに当てはまるかを判断する仕組みです。例えば、親が10年以上前に購入した家を相続した場合、相続後すぐに売ったとしても、長期譲渡所得として扱われます。

単独登記型では贈与とならないように対策を講じる

不動産を売却し、現金で分割することを換価分割と言います。これは、さらに細かくは共同登記型と単独登記型の2種類に分類可能です。

共同登記型  一度不動産を共有名義で取得し、そのまま売却する
単独登記型  不動産を一度、特定の相続人が所有・売却し、代金を他の相続人に分配する

単独登記型は、所有者本人で手続きができるため、意思決定もスムーズです。ただし、他の相続人に代金を分配する際、贈与とみなされるリスクがあるため、注意しないといけません。遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記しておきましょう。

相続した不動産の売却ならイエカカクがおすすめ

相続で手に入れた不動産を売却する際にはさまざまな注意点がありますが、結局「どれぐらいで売れるのか」がわからないと、動きようがない部分もあります。「いくらで売れそうか」と判断するためには、一括見積もりサイトを使うと良いでしょう。

イエカカクの一括見積もりは、一度に最大6社まで査定を依頼可能。利用者からの評判が悪かった不動産会社は掲載を取りやめるなど、利用者にとって使いやすいサービスを心がけています。過去には不動産が1,000万円以上高く売れた事例もありました。

画面の指示に従い必要事項を入力するだけで査定を依頼できるので、相続した不動産を売却することを検討中でしたら、ぜひ一度お試しください。

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