家族から相続した土地があるものの、自分では使わないから手放したいというように、土地を売る必要が出てきた場合、準備が必要です。しかし、土地を売った経験がなければ、そもそも何から手を付けたら良いのかもわかりません。そこで今回の記事では、土地を売るのに必要な書類や費用、注意点などについて、詳しく解説します。土地を売る予定がある人や、将来的にそうなりそうな人はぜひ参考にしてください。
土地を売るには何が必要?
土地を売るにはさまざまな書類・書類が必要になります。ここでは、具体的にどのような書類・必要が必要になるかを一覧でまとめました。
【土地を売るのに必要な書類】
必要な書類 | 必要なタイミング | 入手方法 |
---|---|---|
登録済権利証・登記識別情報 | 査定、引渡し | 売主が保有 ※紛失した場合は事前に相談を |
全部事項証明書 | 売買契約 | 法務局で手続き |
印鑑証明書 | 売買契約、引渡し | 市区町村役場で手続き ※マイナンバーカードがあればコンビニでも入手可能 |
住民票 | 引渡し | 市区町村役場で手続き ※マイナンバーカードがあればコンビニでも入手可能 |
固定資産評価証明書 | 引渡し | 市区町村役場で手続き ※マイナンバーカードがあればコンビニでも入手可能 |
固定資産税および都市計画税の納税通知書の写し | 引渡し | 売主が保有 ※ない場合は市区町村役場で課税明細の内容が記載された名寄帳の写しを交付してもらう |
確定測量図 | 査定、引渡し | 売主が保有 ※ない場合は測量会社に相談 |
筆界確認書・越境の覚書 | 引渡し | 売主が保有 ※ない場合は測量会社に相談 |
本人確認書類 | 売買契約、引渡し | 各自で用意 |
抵当権抹消書類 | 引渡し | 金融機関に相談 |
【土地を売るのに必要な費用】
必要な費用 | 支払うタイミング | 金額の目安 |
---|---|---|
測量費 | 査定に先立ち測量を依頼した場合 | 40万円~80万円 |
仲介手数料 | 売買契約時 | 土地の売却価格により異なる |
印紙税 | 売買契約時 | 土地の売却価格により異なる |
登録免許税 | 登記を行う際 | 固定資産課税台帳に登録された価格により異なる |
譲渡所得税 | 売買契約の翌年 | 売却益が出たかによって異なる |
解体費用 | 建物を解体した時 | 建物の状態や土地の広さにより異なる |
土地を売るのに必要な書類
土地を売るのに必要な書類について、さらに詳しく解説します。
登録済権利証・登記識別情報
登録済権利証・登記識別情報は、法的に不動産の所有権があることを証明するためのものです。従来は登記済権利証が使われていましたが、2005年(平成17年)3月以降からは「登記識別情報通知」で登記識別情報が通知されるようになっています。
土地の査定や引き渡しの際に必要になるため、忘れずに用意しましょう。なお、紛失した場合は再発行ができないため、「事前通知制度」又は「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」のいずれかで本人確認を行う必要が出てきます。事前に不動産会社に相談しておきましょう。
全部事項証明書
全部事項証明書とは、法務局が発行する書類の一種で、不動産の所在や登記されている権利関係を証明する役割を果たします。法務局の窓口、郵送、オンラインでの手続きのいずれかで入手することが可能です。なお、手数料は入手方法によっても以下のように異なるため、節約したい場合は「オンライン請求・窓口交付」を選びましょう。
書面請求 | 600円 |
オンライン請求・送付 | 500円 |
オンライン請求・窓口交付 | 480円 |
印鑑証明書
印鑑証明書とは、実印であることを第三者に証明するための書類です。前提として、住民票のある市区町村役場で印鑑登録を済ませる必要があります。また、引き渡し日から3ヵ月以内に発行したものが求められるため、期限切れにならないかを確認しておきましょう。自治体によっては、マイナンバーカードがあればコンビニのコピー機などで入手できるケースがあります。なお、手数料は入手方法や自治体によっても異なりますが、数百円程度が一般的です。
住民票
住民票とは、実際にその住所に住んでいることを証明するための書類です。一般的には、以下の事項が掲載されています。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 住民となった年月日
- 届け出日
自治体役場の窓口やコンビニでの手続きで入手できます。手数料は自治体や入手方法によっても異なりますが、数百円程度が一般的です。土地の売買においては、引き渡しの際に必要になります。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、土地を含めた不動産の固定資産評価額を証明するための書類を指します。土地の引き渡しを行う際に必要です。
市区町村役場での申請や郵送、コンビニで取得でき、手数料は数百円程度となっています。なお、固定資産評価証明書は原則として売主しか取得できないことにも注意が必要です。
固定資産税および都市計画税の納税通知書の写し
固定資産税および都市計画税の納税通知書の写しには、固定資産税の納税額や評価額が記載されています。固定資産税の精算金を計算するために必要となるため、土地を引き渡すまでに用意しておきましょう。
なお、紛失した場合は再発行できないため、市区町村役場で課税明細の内容が記載された名寄帳の写しを交付してもらうことになります。早い段階で相談し、用意しておきましょう。
確定測量図
確定測量図とは、全ての境界が確定しているときに発行される実測図を指します。既に手元にあるなら、それを査定や売買契約、引渡しの際にすぐに出せるようにしておけば構いません。しかし、ない場合は不動産会社に相談のうえ、測量会社に依頼する必要があります。なお、確定測量図は作成に数ヵ月かかるうえに、土地家屋調査士による調査が必要となるため、費用も数十万円必要です。早い段階で相談し、用意しておくのが望ましいでしょう。
筆界確認書・越境の覚書
筆界確認書とは、自分が売ろうとしている土地の境界が確定していることを証明するために、隣地所有者と締結する書類を指します。前述した確定測量図がある場合には必ずしも必要ではありませんが、ない場合はトラブル対策のためにも取り交わしておきましょう。
一方、筆界の覚書とは、越境の有無や所有権、是正方法について隣地所有者と取り決めをかわすために作成します。こちらも、木の枝や配管などの越境物がある場合にはトラブル対策として作成しておきましょう。
これらの書類を作成する際も、測量会社に相談するのをおすすめします。
本人確認書類
土地の売買に伴って、名義変更のために登記手続きをしますが、この手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。そして、司法書士に依頼する際は、本人確認手続きを行うため、その際に本人確認書類が必要になります。具体的には以下のものを用意しましょう。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 各種健康保険証
なお、共有名義の土地を売るなど、名義人が複数人いる場合は全員分の本人確認書類が必要です。
抵当権抹消書類
抵当権抹消書類とは、土地を含めた不動産に抵当権が残っている場合、それを抹消するために必要となる書類のことです。住宅ローンを借りて不動産を買う場合、金融機関は抵当権を設定します。つまり、何らかの理由で返済ができなくなったら、その不動産を売却して回収に充てるということです。
住宅ローンを完済すれば抵当権を抹消できますが、抵当権抹消登記を行わないと、抵当権は残ったままになります。抵当権が残ったまま不動産を売ることは事実上できないため、抵当権抹消登記が必要になると考えましょう。なお、抵当権抹消書類には具体的に以下の書類が含まれます。金融機関に相談すれば用意してくれるので、早い段階で伝えておきましょう。
- 弁済証書
- 登記済証または登記識別情報
- 登記事項証明書
- 委任状
土地を売るのに必要な費用
土地を売るのに必要な費用についても紹介します。具体的な金額は個々のケースにより異なりますが、参考にしてください。
測量費
測量とは、建設・土木工事を行なう土地で測りたいものに適した機器を使用し、その位置や面積、距離を測る作業のことです。測量費とはこれらの作業にかかる費用を指しますが、具体的な費用は作業内容や関与する当事者の数により異なります。
たとえば、前述した確定測量図の作成を土地家屋氏に依頼した場合、費用は40万円~80万円程度です。ただし、合意を得る必要がある地権者の数が多いと、それ以上になることも珍しくありません。事前に見積もりを取ってもらったうえで依頼しましょう。
仲介手数料
土地の売却を不動産会社に依頼した場合、仲介手数料を払わなくてはいけません。なお、仲介手数料の上限額は法律により決まっていて、以下の式により求めます。
取引額 | 仲介手数料(別途消費税が必要) |
---|---|
200万円以下 | 取引額の5% |
200万円超から400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
400万円超 | 取引額の3%+6万円 |
たとえば、土地が2,000万円で売れた場合、不動産会社に支払うべき仲介手数料の上限は66万円(別途消費税)です。これを超える額の仲介手数料を提示された場合は、その不動産会社への依頼はやめておきましょう。
印紙税
印紙税とは、不動産の売買契約書など、一定の契約書や領収書を作成した場合に、その文書に対し課税される税金を指します。売買契約書に記載する金額に応じて税額が決まるので、事前に不動産会社の担当者に確認し、契約までに必要額を用意できるようにしておきましょう。
契約書に記載する売買金額 | 本則 | 軽減税率※ |
---|---|---|
1万円未満 | 200円 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
金額の記載のないもの | 200円 | 200円 |
※軽減税率は2027年3月31日までの売買契約書で適用
登録免許税
登録免許税とは、土地を含めた不動産の登記にかかる税金を指します。土地を売却する場合、名義変更手続きとして所有権移転登記を行う必要がありますが、この場合も登録免許税を払わなくてはいけません。
なお、登録免許税は「税額=課税標準(土地の固定資産課税台帳に登録された価格)×税率」で計算できます。不動産の売買の場合、税率は以下のとおりです。
- 原則税率:1,000分の20
- 軽減税率:2026年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15
譲渡所得税
土地を売却し、利益=譲渡所得が発生した場合、所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。譲渡所得税とはこれらの税金の総称のです。
譲渡所得税を計算するためには、まず、譲渡所得を「譲渡所得=譲渡価額(売却価格)-取得費(土地の購入額)-譲渡費用(仲介手数料・印紙税など)」という式で計算しなくてはいけません。なお、所得費がわからない場合は、売却価格の5%を概算取得費として譲渡所得を計算します。
譲渡所得が求められたら、そこに税率をかけて譲渡所得税を求めることが可能です。
なお、税率は短期譲渡所得と長期譲渡所得のどちらに当てはまるかによって異なるので、都度確認しましょう。
項目 | 概要 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で「所有期間5年以下」 | 所得税:30.63% 住民税:9% |
長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で「所有期間5年超」 | 所得税:15.315% 住民税:5% |
解体費用
土地の売却に先立ち、建っていた建物を解体する場合は、解体費用を払わなくてはいけません。相場は以下のとおりですが、個々の状況によって実際の金額は異なるので、見積もりを取ってから依頼先を決めましょう。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 坪4~5万円 |
鉄骨造 | 坪6~7万円 |
鉄筋コンクリート造 | 坪7~8万円 |
土地を売りたいときはどこに相談すればよい?
土地を売る際は不動産会社に相談するのが一般的ですが、それ以外の専門家などに相談することも可能です。相談先をまとめたので参考にしてください。
相談相手 | 相談できる内容 | 相談にかかる費用 |
---|---|---|
不動産会社 | ・不動産の査定 ・不動産の売却相談 ・不動産の購入相談 ・不動産の買取り ・不動産投資の相談 ・住宅ローンのあっせん ・不動産売却や購入に関する税金相談 | 基本的に無料 |
不動案鑑定士 | 不動産評価鑑定書の作成 | 内容次第ではあるが、一般的には20万円~40万円程度 |
司法書士 | 不動産の登記に関する業務や相続に関連する書類作成 | 一般的な不動産の登記申請(所有権移転登記など)の場合、5〜10万円 ※内容によって異なるので別途見積もり必須 |
弁護士 | 土地売却時に起きたトラブルの解決 | 相談料や着手金、報酬金(解決後に支払う報酬)から成り、それぞれの弁護士が定めるところによる |
土地家屋調査士 | 土地の境界や測量 | 現況測量の場合、10万円~20蔓延程度 ※ただし、土地が大きい場合や隣地の所有者が国や都道府県の場合は追加費用がかかるケースが多い |
税理士 | 譲渡所得税、相続税など税金に関する相談 | 相談する内容次第だが、個人の確定申告の場合数万円〜20万円 ※別途顧問料が必要 |
公的な相談窓口 | 不動産会社の選び方、トラブル対応などの情報提供 | 無料。ただし、通話料がかかるケースがあるので要確認 |
土地を売るときの注意点
土地を売る際は、以下の点にも注意しましょう。
- 境界確定と測量を済ませる
- 相続した土地の相続登記を済ませる
- ローンの完済有無を確かめる
- 必要書類をもれなく揃える
- 前面道路との関係に注意する
- 契約不適合責任の内容を熟知する
- 借地や底地の売却は慎重に行う
- 遠方の土地は現地の不動産会社に売却を依頼する
- 共有の土地売却では登記簿謄本を取得しておく
- 重要事項は売買契約書に明確に記載する
これらはいずれも、土地を売却する際のトラブルを避けるために重要なことです。自分だけでわからなければ、不動産会社や専門家に相談したうえで、疑問点を解決してから進めましょう。
土地を売るならイエカカクの一括見積もりがおすすめ
土地を売るためには、さまざまな費用や書類が必要なので、事前に流れを確認し、入念な準備をしましょう。ただし、あまり気負い過ぎることなく「わからなければ聞く」という姿勢で進めれば基本的に問題ありません。そのためには、わからないことを聞いたらていねいに教えてくれる不動産会社に依頼しましょう。
イエカカクの一括見積もりは、簡単な操作を済ませるだけで厳選された不動産会社6社に一度に査定を依頼できます。やり取りをして「ここなら任せられそう」と思えた不動産会社に依頼すれば、土地の売却もスムーズに進められるはずです。土地を売る予定がある、もしくは近々考えているなら、ぜひ一度お試しください。